筋の記憶力:PART2

筋の記憶力:PART2

 

 

 2001年9月の本コラムで「筋の記憶力?」という記事を掲載しました。
現役を退いてから15年ぶりにボディビルコンテストに復帰し、全日本クラス別90kg級で6位、社会
人マスターズで優勝した当時のことです。
長いブランクのためにすっかり筋肉は萎えてしまっていましたが、コンテスト出場を心に決めてから6ヶ月あまりの筋力トレーニングで、一応「コンテストコンディション」といえるような状態にできたこと自体、本人にも驚きでした。
そこで、「筋には以前のトレーニングの効果が、ある種の記憶となって長期間残っているのではないか?」と考え、そのことを多少学問的に解説しようと試みました。
その後研究が進展し、ごく最近になって、この9年前の想像を実際に検証するような研究が報告され、"Muscle Memory"という用語まで論文に掲載されるに至りました。
今回は、この「筋の記憶力」について、新しい知見をもとに再考してみたいと思います。

トレーニングとディトレーニング
 私の指導院生の小笠原君は、6ヶ月間継続して筋力トレーニングを行うグループ(Tグループ)と、4週間トレーニング、3週間ディトレーニング(トレーニングを休止)というスケジュールで同じく6ヶ月間トレーニングするグループ(TDグループ)で、筋力の増加や筋のサイズなどを継時的に測るという研究を行いました。
まだ論文公表前の段階ですので、詳細は述べられませんが、要約すると次のような知見が得られました:TDグループでは、ディトレーニング中に筋力と筋サイズは徐々に落ち込んでしまいましたが、トレーニング再開とともにこれらは急速に回復し、結果的に6ヶ月後の筋力と筋サイズは、Tグループに完全に追いつきました。
このことは、少なくとも3週間程度、筋肉には「記憶のようなもの」が残り、トレーニング再開後すぐに、休止前の筋力と筋サイズに戻ることを示唆しています。

筋肥大と筋線維核数の増加
 トレーニングによる筋肥大は、筋線維の肥大と若干の筋線維の増殖によって起こりますが、主要因は筋線維の肥大です。
筋線維の肥大は、まず筋線維内でのタンパク質合成の上昇によって起こります。
しかし、筋線維の中にある核(筋線維核)には支配可能な「なわばり」といえる領域(核領域)があるため、ある一定の限度を超えて筋線維が肥大するためには、筋線維核の数を増やす必要があります。
このとき、新しい核の供給源となるのが、「筋サテライト細胞」という細胞です。
この細胞は、筋線維の素になる「幹細胞」で、筋線維の周囲に貼り付いています。
トレーニングすると、この筋サテライト細胞が分裂・増殖し、筋線維に融合することで核数が増え、筋線維がさらに肥大するという仕組みです。

ディトレーニングしても筋線維核は減らない
 最近、Bruusgaardら(2010)は、マウスとラットを用いた興味深い研究を米国科学アカデミー紀要(PNAS)という一流誌に報告しています。
彼らは、生きている筋線維中の核を標識し、特別な顕微鏡観察法によって、動物が生きたままの状態で、筋線維の横断面積と核数を経時的に測るという手法を用いました。トレーニングに相当する刺激として、後肢の前脛骨筋(TA)を切除し、共同筋である長指伸筋EDL)に過負荷をかけ肥大を起こさせました(代償性肥大)。
一方、ディトレーニングに相当するものとして、EDLを支配する運動神経を切除し、筋萎縮を起こさせました(除神経)。
その結果、TAの切除から2週間でEDLの筋線維横断面積が平均20%増大しましたが、その肥大に3日ほど先行して、長さ1mmあたりの筋線維核数が約40から60に増加しました。
その後、除神経すると、筋線維は急速に萎縮しましたが、増加した筋線維核数は減りませんでした。
この核数の増加は、除神経して2ヶ月たっても維持されました。
さらに、最初に過負荷をかけて筋線維核を増やしておくと、除神経による筋萎縮の程度そのものも低減することがわかりました。
この実験系では、残念ながら除神経で萎縮した筋に再び過負荷をかけることができませんので、再負荷後に急速に肥大が起こるかは不明です。
しかし、過負荷によって筋線維核が増えることが、一種の「長期記憶」として筋線維に定着する可能性が強く示唆されたといえます。

若いうちに筋肉をつくり、時には休む
 これらの研究から、筋には確かにトレーニング効果を「記憶する」メカニズムがあり、その一端は筋線維核の増加だろうと考えられます。
その「記憶」の長さは、マウスでは2ヶ月以上。
寿命から類推すると、ヒトでは10年以上にわたる可能性があります。
15年のブランクの後でも、比較的早期に筋を立て直すことができたことにも納得できます。
このことは、まず若いうちにしっかり筋肉をつくっておくと、生涯の財産になることを示唆しています。
一方、トレーニングプログラムの観点では、コンスタントにトレーニングを継続することが、必ずしもベストのやり方でない可能性があります。
一定期間の完全休息や、全く異なるタイプのトレーニングなどを挟み込んだ、バリエーションのあるプログラムが、最終的によりよい結果に結びつくのではないかと思います。

石井直方 東京大学大学院教授 理学博士

Kentaiニュース193号(2010年10月発行)より転載

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