強い意志を必要としない減量法 |
松下 輝 パーソナルトレーナー 「減量を成功させるには」 ▶毎日、起床後の体重を記録する ▶定期的に途中経過を誰かに報告する 今回からは夏に向けて関心が高くなるウエイトコントロールの方法についてアドバイスしていこう。ここで紹介する減量のアドバイスは、強い意思があって食事やトレーニングをきちんと実践できる人を対象にしたものではない。そういった人たちは他の記事に詳しくダイエットやトレーニングの方法が紹介されているので、そちらを参考にしていただきたい。「体重を減らしたいが、何から始めたらよいかわからない」「いつも減量を失敗しているので、正しい知識を身につけたい」といった人に向けたアドバイスである。 減量を始めるにあたって、まず知って欲しいのは「減量することは非常に難しい」ということである。なぜなら、好むと好まざるとに関わらず、今のあなたの体型や体重はこれまでの生活習慣を反映したものであり、減量するには長年続けてきた生活習慣を変えなければならないからだ。ひとくちに生活習慣を変えるというが、これは「生活が変わる」のと同じことであり、オーバーな言い方をすれば「生き方」を変えると言ってもいいぐらいの環境の変化となる。 生命維持を最優先とする身体は、「減量」という身体に備蓄したエネルギーを無くす行為に対して、相当な抵抗をすることも覚悟しておいて欲しい。そして減量の最も難しい点は、減った体重のままでいるためには、変えた生活習慣を長期にわたって継続し続けなければならないということだ。 「バナナダイエット」や「りんごダイエット」などの方法で痩せようと思ったら、それをこれから5年間続けていけるか想像してみて欲しい。なぜ5年間かというと生活習慣が定着し、リバウンドの可能生が低くなるには、このぐらいの期間が必要とされているためだ。 スポーツ競技に向けた減量を除けば、減量の取り組みにゴールはない。無理せず長く続けられる方法でなければ、必ずリバウンドすると思ったほうがいい。これまで多くの減量の指導をしてきたが、減量後2年や3年経ったとしても、生活習慣が戻れば、あっという間に元の体重以上にリバウンドしてしまうケースは決して珍しくないのだ。 「この方法で必ず痩せる」という減量法は現時点では1つしかない。それは「摂取するカロリーよりも消費するカロリーを増やす」ことだ。さまざまなダイエット方法が氾濫しているが、この基本に沿わない限り絶対にやせることはできないといえる。 減量を始める際に最初にやることは、毎日体重を計り記録に残すことだ。起床後、トイレにいったあとの体重が、減量をおこなう上で基準の体重となる。この体重が1日の中で最も軽く、また影響を受けにくい。この体重が減ってくれば、減量が順調に進んでいることになる。トイレの近くに体重計を置くと習慣化しやすいだろう。もし可能なら、1日の中で最も重い体重となる、1日の最後の食事のあとの体重も計って記録してみよう(就寝前のプロテインは除く)。 体重を記録するのは、手帳やカレンダーでもよいが、最も効果が高いのはグラフにして目で見て体重の変化を確認することだ。グラフは、数ある減量のホームページからもダウンロードすることもできるし、自分でパソコンや方眼紙を使って作ってもよい。体重の最小目盛りは0.1kg単位にすること。体重の変化が大きく現れるようにしたほうが効果的だからだ。グラフの中央に現在の体重をとって記録しはじめよう。起床後の体重と最後の食事のあとの体重を結んでいくと、折れ線グラフができる。この折れ線グラフが下を向いて推移すれば減量、上を向いて推移していけば体重が増加していることになる。さらに体重の記録と一緒に、トレーニングやたくさん食べた日など、体重に影響を与えるような出来事があればそれを書き込んでおこう。 体重を記録する最大の意味は「自分がなぜ体重が増えるのか」「どんなときに体重が減るのか」を知ることができることだ。普段、「食べ過ぎと運動不足だから体重が減らない」と何となくは感じていても、実際に体重の記録をつけていくと、その影響が明確に分かるようになる。このことで逆に減量するためには生活の何を変えればいいのかを意識することができるのだ。 減量を成功させる上でもう一つ重要なことがある。それは減量の途中経過を定期的に報告する機会を持つことだ。家族でも友人でも通っているジムのスタッフでもいい。誰かに報告する時に「悪い結果」を報告したいと思う人はいない。誰もが「よい結果」を報告したいと思うものだ。このことが減量の大きなモチベーションになる。私のクライアントでも、体重の記録を見ると増加傾向にあったのに、セッションが近くなると急に体重が減ってきて、セッション当日にはよい結果がでることがよくある。 減量するペースが急激であれば、それだけリバウンドが起こる危険性も高くなり減量は失敗しやすい。体格や体質、本人の性格などの個人差もあるが、長期的にみると平均して1ヶ月に0.5~1kgの減量が最もリバウンドしにくく成功しやすい。次回からは体重記録の活用方法と具体的に食事や運動の方法について紹介していこう。
[『マッスル・アンド・フィットネス日本版』2009年6月号にて掲載]
|
コメントをお書きください