「睡眠時間が短い人のほうが太りやすい」と聞きました。寝ている間より、起きているときのほうがエネルギーを多く消費するような気がするのですが……。 確かに横になって眠っている間の消費エネルギーは、起きて活動しているときより少なくなります。これだけを考えると、寝ている時間が短いほうが1日の総消費エネルギーが多くなるので太りにくいことになります。ところが、アメリカで行われた調査で、一晩の睡眠時間の平均が7〜9時間の人と比べた肥満のリスクは、4時間未満の人では73%高く、5時間の人で50%、6時間の人でも23%高いという結果が出ているのです。理由としては、起きている時間が長くなると、食べたり、飲んだりする量も多くなり、消費エネルギー以上に摂取エネルギーが増加するからではないかと考えられます。 では、起きている時間が長くなっても、食べすぎないように注意すれば太らないはずだと考えるかもしれません。 短い期間を考えればそうかもしれません。しかし、前述した調査のように、実際に睡眠時間が短い人は肥満のリスクが高いという結果が出ています。この原因として、睡眠と、食物摂取をコントロールする体のさまざまな機能との間に関係があることがわかってきました。 その一つとして、睡眠時間の長さと血液検査の結果を照らし合わせた研究で、睡眠時間が短い人は、血液中のレプチンという物質の量が少なく、グレリンという物質が多いことが明らかになっています。レプチンは脂肪細胞でつくられるホルモンで、満腹になったという信号を脳に送り、摂食をストップさせるように働きます。平均睡眠時間が5時間の人では、このレプチンが平均睡眠時間が8時間の人と比べて15.5%少なくなっていました。 一方、グレリンは主に胃でつくられ、摂食行動を促進するホルモンです。このグレリンは、睡眠時間が5時間の人のほうが14.9%多かったのです。レプチンが少なくても、グレリンが多くても、食欲が増すことになります。 ホルモンに勝つ? レプチンによる食欲を抑える働きが弱く、グレリンによる食欲を高める働きが強くなれば、食べる量、飲む量が増えるでしょう。夜遅くまで起きていると、夜食を食べる機会が増えるというだけではないのです。このようにホルモンの量が変わっていれば、朝、昼の食事でも満腹感が感じられるまでに時間がかかり、より多く食べるようになったり、間食が増えたりする可能性も高くなります。自分では食べ過ぎないようにしようと決めていても、ホルモンの働きで脳が満腹とは感じず、「もっと食べよう」という信号が出ているわけですから、食べずにいるのは難しいでしょう。 このように、体を取りまく条件に応じて、体内ではさまざまなホルモンの働きが変化し、その結果として体の状態が変わります。「意志を強く持って、食べないようにしよう」とがんばるだけでは解決しないかもしれません。睡眠時間を含めて生活を振り返り、「食べたい」と感じさせない条件を整えることも考えてみましょう。 |
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